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🌿 竹垣の種類シリーズ(全7回)


🎋第1回:竹垣とは何か? ― 日本庭園を彩る伝統の境界美


■ 自然素材がつくる“境界の美学”

日本庭園を歩いていると、ふと目に留まる竹で編まれた垣根
それは、ただの“仕切り”や“柵”ではありません。
空間を分ける「結界」としての意味や、
庭の風情を深める意匠としても重要な役割を担ってきました。

竹垣は、自然素材でありながら構造性と装飾性を併せ持つ
日本独自の庭園文化が育んできた伝統技術のひとつです。


■ 竹垣の役割とは?

竹垣には、以下のような多様な役割があります。

  • 🏞️ 景観の構成要素として
     建物や植栽と調和し、空間の美しさを引き立てる
  • 👁️‍🗨️ 目隠し・視線のコントロール
     庭の一部を隠すことで奥行き感を演出
  • 🔲 結界・境界としての機能
     人の動きや視線を区切り、静と動の空間を分ける
  • 🍂 風・音・気配の演出
     風にそよぐ音や、葉が当たる音も含めた“庭の音”を整える

単なる囲いではなく、「見せる」「包む」「導く」など、
庭にリズムと陰影を与える装置でもあるのです。


■ 竹という素材の特徴

竹垣に用いられる竹材は、種類によって風合いや耐久性が異なります。
主な種類は以下の通り:

🌿 竹の種類主な特徴
真竹(まだけ)最も一般的。まっすぐで加工しやすく、均質な表情。
孟宗竹(もうそうちく)肉厚で力強い。耐久性あり。存在感のある垣に最適。
淡竹(はちく)表皮がやや薄く、素朴でやわらかな風合い。

いずれも、伐採のタイミング・油抜き・乾燥などの工程により、
色・艶・耐久性に差が出ます。竹職人の技術が光る素材でもあります。


■ 基本構造を知っておこう

竹垣の構成は意外とシンプルです。以下の部材でできています:

  • 🪵 親柱(おやばしら)・控柱
     竹垣を支える骨組みの柱。木材や金属を用いることも。
  • 🪢 胴縁(どうぶち)・貫(ぬき)
     竹材を通す横木。装飾的意匠にもつながる。
  • 🎋 竹材本体(立子・横子など)
     視覚的なデザインの中心。格子状・斜め編み・縦横組など様々。
  • 🧵 結束材(しゅろ縄・針金・樹脂紐など)
     風合いと耐久性を兼ねる重要な部分。結び方も意匠の一部。

この構造の組み合わせによって、多種多様な竹垣が生まれていきます。


■ 竹垣は“庭の静けさ”を作る装置

自然素材の中でも、時間と共に色あせ、朽ちていく美しさを持つ竹。
その儚さを受け入れることで、庭はより深みを増していきます。

竹垣は単なる“仕切り”ではなく、
**空間の重なりや余白を美しく見せる“舞台装置”**でもあるのです。

これからの連載では、そんな竹垣の奥深い世界を
種類別・用途別・歴史・地域性などの観点から詳しくご紹介していきます。


次回(第2回)は、
建仁寺垣・四ツ目垣・御簾垣などの代表的な竹垣の紹介です。
実際の庭園使用例や特徴など、わかりやすく解説していきます!

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