🎋第1回:竹垣とは何か? ― 日本庭園を彩る伝統の境界美
■ 自然素材がつくる“境界の美学”
日本庭園を歩いていると、ふと目に留まる竹で編まれた垣根。
それは、ただの“仕切り”や“柵”ではありません。
空間を分ける「結界」としての意味や、
庭の風情を深める意匠としても重要な役割を担ってきました。
竹垣は、自然素材でありながら構造性と装飾性を併せ持つ、
日本独自の庭園文化が育んできた伝統技術のひとつです。
■ 竹垣の役割とは?
竹垣には、以下のような多様な役割があります。
- 🏞️ 景観の構成要素として:
建物や植栽と調和し、空間の美しさを引き立てる - 👁️🗨️ 目隠し・視線のコントロール:
庭の一部を隠すことで奥行き感を演出 - 🔲 結界・境界としての機能:
人の動きや視線を区切り、静と動の空間を分ける - 🍂 風・音・気配の演出:
風にそよぐ音や、葉が当たる音も含めた“庭の音”を整える
単なる囲いではなく、「見せる」「包む」「導く」など、
庭にリズムと陰影を与える装置でもあるのです。
■ 竹という素材の特徴
竹垣に用いられる竹材は、種類によって風合いや耐久性が異なります。
主な種類は以下の通り:
🌿 竹の種類 | 主な特徴 |
---|---|
真竹(まだけ) | 最も一般的。まっすぐで加工しやすく、均質な表情。 |
孟宗竹(もうそうちく) | 肉厚で力強い。耐久性あり。存在感のある垣に最適。 |
淡竹(はちく) | 表皮がやや薄く、素朴でやわらかな風合い。 |
いずれも、伐採のタイミング・油抜き・乾燥などの工程により、
色・艶・耐久性に差が出ます。竹職人の技術が光る素材でもあります。
■ 基本構造を知っておこう
竹垣の構成は意外とシンプルです。以下の部材でできています:
- 🪵 親柱(おやばしら)・控柱:
竹垣を支える骨組みの柱。木材や金属を用いることも。 - 🪢 胴縁(どうぶち)・貫(ぬき):
竹材を通す横木。装飾的意匠にもつながる。 - 🎋 竹材本体(立子・横子など):
視覚的なデザインの中心。格子状・斜め編み・縦横組など様々。 - 🧵 結束材(しゅろ縄・針金・樹脂紐など):
風合いと耐久性を兼ねる重要な部分。結び方も意匠の一部。
この構造の組み合わせによって、多種多様な竹垣が生まれていきます。
■ 竹垣は“庭の静けさ”を作る装置
自然素材の中でも、時間と共に色あせ、朽ちていく美しさを持つ竹。
その儚さを受け入れることで、庭はより深みを増していきます。
竹垣は単なる“仕切り”ではなく、
**空間の重なりや余白を美しく見せる“舞台装置”**でもあるのです。
これからの連載では、そんな竹垣の奥深い世界を
種類別・用途別・歴史・地域性などの観点から詳しくご紹介していきます。
次回(第2回)は、
▶ 建仁寺垣・四ツ目垣・御簾垣などの代表的な竹垣の紹介です。
実際の庭園使用例や特徴など、わかりやすく解説していきます!