🎋第3回:代表的な竹垣②
― 龍安寺垣・金閣寺垣・桂垣に見る格式と美意識 ―
庭を引き締める竹垣の中でも、格式と意匠性を兼ね備えた代表例として知られるのが、龍安寺垣・金閣寺垣・桂垣の3つです。
いずれも名園の名を冠した伝統的な竹垣で、庭の“格”を引き上げ、空間に深みと緊張感を与えてくれます。
それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
🏯 龍安寺垣(りょうあんじがき)
静寂と整然の象徴、禅寺を彩る透かし垣
龍安寺垣は、京都・龍安寺の石庭周辺に見られる、菱形に斜め組みした割竹を使った透かし垣です。
高さは控えめで、50~100cmほど。
上部に半割竹の玉縁、下部に押縁をあしらい、低く抑えた姿が石庭の静けさと響き合います。
視線を遮りすぎず、穏やかに境界をつくるこの竹垣は、「見せて、隠す」空間表現。
風が通り抜ける透かし構造は、庭の余白や間を引き立てます。
🏯 金閣寺垣(きんかくじがき)
端正に組まれた構造美、品格漂う低垣
金閣寺垣は、丸竹の立子を等間隔に並べ、前後から太い押縁で挟み込む構造。
仕上げには上部に半割の玉縁を乗せ、丁寧で安定感ある佇まいが魅力です。
高さは50〜90cmほどと控えめながら、存在感はしっかりとあり、庭全体を落ち着いた印象にまとめます。
京都・金閣寺の鏡湖池周辺に設けられていることからこの名が付き、
品格ある庭園や玄関前の外構にも適した竹垣といえるでしょう。
🌿 桂垣(かつらがき)
自然の素材感を活かした、しなやかな遮へい垣
桂離宮に由来するこの竹垣は、竹穂(たけぼ:細い枝)を密に並べた穂垣の一種です。
竹穂を横に並べ、太い竹を半割にして縦に押え縁とします。
押え縁の上端を斜めに切りそろえるのが大きな特徴。
2mほどの高さでしっかりと目隠し効果を持ちながらも、竹の枝葉が醸す自然な雰囲気が、凛とした空気を生み出します。
意匠性が高く、三溪園(横浜)や庭園施設でも多く使われており、
豪華で圧倒的な存在感を魅せてくれ現代でも重宝されています。
🏡 現代の庭や空間にどう活かす?
- 和モダンな住宅の外構には、金閣寺垣をモチーフにした低垣を設置すれば、落ち着きと開放感のバランスが取れます。
- 料亭や宿泊施設の外観では、龍安寺垣のような菱目組を取り入れることで、視線の透け感と静寂を演出。
- 高級邸宅や茶室の背景には、桂垣を現代風にアレンジした高垣を。遮蔽性と軽やかさを兼ね、プライベートな空間を守りつつ美しさも備えます。
最近では、樹脂竹や軽量素材を使った施工例も増えており、伝統的なデザインをそのまま活かしながら、耐久性やメンテナンス性を高めた製品も登場しています。
✍️ まとめ
どれも由緒ある寺院の名を持つ竹垣ですが、ただの装飾ではなく、「場を整える力」を持った構造物です。
庭の格を高め、見る人の心を静かに整える竹垣の力は、現代の空間にも生かせる価値があります。
次回(第4回)は、
▶ **素材の違いと加工技術 ― 竹の選び方と職人の技**についてご紹介します。
素材そのものに宿る美しさと職人技の世界を、どうぞお楽しみに🌱