🎋第4回:素材の違いと加工技術
― 竹の選び方と職人の技 ―
竹垣の美しさと耐久性を左右するのは、「どんな竹を使うか」と「どう加工するか」にかかっています。
自然素材である竹は、そのままでは腐りやすく、色も変化しやすいもの。
だからこそ、素材の選定と仕上げの技術が非常に重要なのです。
今回は、竹垣を構成する基本素材と、その加工・結束の技術について解説します。
🎍 竹の種類と産地
竹垣に使われる主な竹は、大きく分けて以下の3種類です。
種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
真竹(まだけ) | 節がまっすぐで表皮が滑らか。扱いやすく、自然な風合い。 | 四ツ目垣、建仁寺垣、御簾垣など |
孟宗竹(もうそうちく) | 太くて厚みがあり、丈夫で存在感がある。 | 金閣寺垣、高垣など |
淡竹(はちく) | 軽量でやや白っぽく、素朴な印象。 | 草垣や簡素な垣など |
また、産地によっても品質や色味が異なります。
- 国産(京都、土佐、熊本など):節間が揃い、しなやかで耐久性が高い。
- 中国産:安価で大量供給が可能。品質にばらつきがある場合も。
施工環境や予算に応じて、適切な素材選びが求められます。
🔥 油抜き・燻し・磨き・染め ― 仕上げの技術
伐採した竹は、そのままでは虫害やカビ、割れが起きやすいため、さまざまな加工を施します。
ここでは代表的な4つの仕上げ方法をご紹介します。
◎ 油抜き(あぶらぬき)
竹の表面に含まれる油分を熱で抜き取り、カビや虫害を防止。
火であぶって油をにじませ、布で拭き取る工程で、表面には自然な艶が生まれます。
◎ 燻し(いぶし)
煙で燻し上げて殺菌・防虫処理を行う技法。
深い茶色〜黒褐色になり、落ち着いた古民家風や茶庭にマッチします。
◎ 磨き
研磨して光沢を出し、表面を滑らかに整える仕上げ。
茶室の内垣など、繊細な印象を求める場に使用。
◎ 染め
人工的に色を染めることで、統一感ある仕上がりに。
現代的な意匠や、特定のテーマに合わせたデザインに用いられます。
竹の表情は仕上げひとつで大きく変わります。
「どんな空間に仕上げたいか」に応じて選ぶことが大切です。
🧵 結束の手法 ― 細部に宿る伝統と実用性
竹を束ね、固定する結束方法にも種類があります。
結束材料 | 特徴 | 用途例 |
---|---|---|
棕櫚縄(しゅろなわ) | 自然素材で柔らかく、見た目が美しい。伝統的な仕上げに最適。 | 茶庭、数寄屋垣など |
針金(ステンレス線) | 強度があり目立ちにくい。隠し結びや裏結束に。 | 公共工事やモダンな施工 |
合成縄(ビニロン製など) | 棕櫚縄に似た風合いで、耐久性・耐候性が高い。 | メンテナンスが難しい場所に最適 |
棕櫚縄は年月とともに朽ちていきますが、それがまた竹垣の風情でもあります。
逆に合成縄は長持ちしますが、趣にはやや欠ける場合も。用途と環境に応じた選択が必要です。
⏳ 経年変化とメンテナンスの知恵
自然素材の竹は、時間とともに色が変わることも魅力のひとつです。
- 油抜きした竹 → 時間とともに淡い灰色〜白銀色へ
- 燻し竹 → 深い色を保ちながら、やや赤味を帯びてくる
定期的なメンテナンスとしては…
- 緩んだ結束部分の締め直し
- 雨による腐食部の点検
- 風通しの確保(湿気を溜めない)
適切な管理を続ければ、自然素材でも5〜10年は美観を維持できます。
逆に放置すると劣化が早く、せっかくの竹垣が「みすぼらしく」なってしまうことも…。
✍️ まとめ:竹の魅力は“選ぶ力”と“整える技”に宿る
竹垣をつくる上で、
- どんな竹を選ぶか
- どのように加工・仕上げを施すか
- どの結束方法を用いるか
これらの選択は、庭や空間全体の印象を左右する重要なポイントです。
表面の美しさだけでなく、耐久性・安全性・維持管理のしやすさまで見据えた「素材と技」の融合が、良い竹垣を生み出します。
次回(第5回)は、
▶ 時代とともに変化する竹垣
歴史の中でどう役割が変わり、今どんな価値が見直されているのかを紐解いていきます。どうぞお楽しみに🎍