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🌿 竹垣の種類シリーズ(全7回)④


🎋 第5回:時代とともに変化する竹垣

千年の美意識を受け継ぎ、未来へつなぐ「竹のかたち」


竹垣は、単なる境界や仕切りではありません。
時代ごとの建築様式や暮らしの中で形を変え、**美と機能を兼ね備えた“文化の道具”**として発展してきました。

本記事では、平安から現代に至るまでの竹垣の変遷をたどりながら、
現代における新しい素材・役割、そしてSDGsの視点から再注目されている竹の魅力についてご紹介します。


🏯 平安〜江戸時代:格式と装飾性を支えた竹垣

平安時代には、貴族の邸宅や寺社の庭園において、庭そのものが“見せる文化”の場でした。
その中で竹垣は、単なる仕切りではなく「景観の一部」として設計され、格式や身分を象徴する装飾の役割を担っていました。

  • 天皇や上皇の離宮に用いられた桂垣
  • 仏教と結びついた庭に設けられる龍安寺垣
  • 四季折々の景を引き立てる御簾垣・四ツ目垣 など

江戸時代には茶道や作庭の発展に伴い、数寄屋風庭園が普及し、竹垣もさらに繊細で美意識の高いものに。
「見せる裏方」としての役割が確立していきました。


🍵 明治以降:数寄屋建築・茶庭との融合

明治以降、武家社会から民間への文化移行が進み、数寄屋建築が一般の富裕層にも広がっていきます。
それに合わせて茶室や露地庭(ろじにわ)が多く造られ、竹垣は**「日常にある非日常の演出」**として欠かせない存在となります。

この時代には…

  • 茶室へのアプローチを演出する建仁寺垣や鉄砲垣
  • 坪庭などの狭小空間でも映える袖垣
  • 機能と景観を両立した結界垣

などがよく使われ、控えめながらも“粋”を感じさせる演出が求められました。


🏙 現代:樹脂竹や人工竹の登場と広がり

近年では、建築資材としての樹脂竹・人工竹材が急速に普及しています。
これは現代の住宅や商業施設、公共空間において、耐久性や施工効率を重視する傾向が高まっているためです。

樹脂竹の特徴:

  • 本物の竹に近い色味・節目を再現
  • 防腐処理不要、メンテナンスフリー
  • 紫外線や雨風にも強く、長期間の美観維持が可能

この技術により、竹垣のデザイン性はそのままに、施工コストや維持管理の負担を軽減できるようになりました。

特に…

  • 商業施設やマンション外構
  • モダン住宅の玄関回り
  • 屋外イベントや展示庭園の仮設垣

など、竹垣の用途は現代に合わせて柔軟に進化しています。


🌱 SDGs時代の竹 ― 再生素材としての未来

近年、竹はその環境への優しさと再生能力から、再び注目を集めています。

竹の環境特性:

  • 生育が早く(数年で成木化)、伐採しても地下茎から再生
  • 二酸化炭素の吸収量が高く、持続可能な資源
  • 化学処理なしでも加工可能、廃棄も自然分解されやすい

これらの特性から、**竹はSDGsの理念に合致した「循環型建材」**として、
建築・造園・商品パッケージなど幅広い分野での応用が進んでいます。

さらに、国産竹林の手入れや里山整備と連動した竹材活用は、地方の環境保全・雇用創出にも貢献します。


✍️ まとめ:千年の“用の美”を、これからの景に

竹垣は、時代とともにその役割や素材、表現方法を変えてきました。
しかし一貫して、**「空間を引き締め、やさしく区切る」**という役割を担い続けています。

  • 平安の装飾垣
  • 茶人の数寄に寄り添う垣
  • 現代のエクステリアとしての簡潔な垣
  • そして、未来のエコ素材としての竹

文化と技術が融合しながら、竹垣はこれからも私たちの風景を彩っていくでしょう。


次回(第6回)は、
▶ 地域ごとの竹垣文化 ― 西と東の意匠の違いをテーマに、記事をお届けします。お楽しみに🎍


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