🌑 第3回:石を動かす道具 ― 石組・飛び石の世界
— 三神庭芸「職人の道具と手しごと」シリーズ —
石は庭の“骨格”をつくる存在。
一本の木とは違い、動かす・据える・傾けるそのすべてに熟練の技が求められます。
造園は「石をどう置くか」で景観が決まるといっても過言ではありません。
今回は、石を扱うための職人道具と、繊細な技についてご紹介します。
🪨 石を扱うための道具 — 重さと向き合うための装備
🔧 しょうせん(バール)
石の位置を数センチ動かすだけでも、しょうせんは欠かせない道具。
“てこの原理”を生かし、職人は石の重心を感じながら微調整します。
🔨 石槌(いしづち)・カケヤ
- 石槌:石の表面を軽く叩き、水平や傾きを微調整。
- カケヤ(木槌):大きな石を優しく動かす役割。
力任せに扱うのではなく、石に振動を伝えて動かすのがポイントです。
🧵 三又・チェーンブロック
重い石を動かす際には必須道具。
職人同士が声を掛け合い、ミリ単位で位置を合わせていきます。
石は形によって持ち方・回し方・傾け方が違うため、道具と体の使い方が常に変化します。
🌿 飛び石・延段・石橋を据える技 — “置くだけ”ではない世界
庭石を据える作業は、見ればシンプルに見えますが、
実際は非常に繊細な工程です。
🚶♂️ 飛び石(とびいし)
飛び石は、「歩きやすさ × 景観美」の両立が必要。
- 踏む位置
- 歩幅
- 目線の抜け
- 雨の日の滑りにくさ
これらを考慮しながら、一枚一枚向きを決めて据えていきます。
🪨 延段(のべだん)
アプローチや地面の“面”をつくるための石張り。
少しの傾きで雨水の流れが変わるため、
石槌でコツコツと叩きながら高さを調整します。
🌉 石橋(いしばし)
庭の象徴になる石橋は、
ただ据えるのではなく **「石の自重を生かして安定させる」**のが職人技。
見えない部分に小石を噛ませ、水平と強度を両立させます。
✋ 石の重さを“手のひらで感じる”職人技
石は形・材質・密度によって重さが大きく異なります。
職人は、石を持ち上げる瞬間、触れた瞬間に、
その石の
- 重心
- 向き
- 置くべき場所
- 最適な角度
を感覚で判断します。
この“重さの読み取り”こそ、石を扱う仕事の神髄。
経験を積むうちに、
手のひら・足の裏・体への響きで石を理解できるようになるのです。
🌱 おわりに
石を扱う仕事は力仕事に見えますが、本当は“繊細な仕事”。
ミリ単位の調整、石の性質を読む力、道具の使い分け。
この積み重ねが、美しい庭の景観を支えています。
次回は、
第4回:「竹と木の道具 ― 竹垣づくりと伝統仕上げ」
をお届けします。どうぞお楽しみに。

