🌿 第6回:職人の“手”が生み出す景観 ― 道具を超える技術とは
— 三神庭芸「職人の道具と手しごと」シリーズ・最終回 —
造園の仕事は、道具が揃えばできるものではありません。
剪定ばさみ、ノコギリ、ツルハシ、カンナ…。
どれも大切な相棒ですが、
それらを“どう使うか”は 職人の手、感覚、経験 によって大きく変わります。
今回の最終回では、道具の扱いを超えて
“景観を生み出す職人の感性”に焦点を当てます。
✋ 道具を使いこなす感覚 ― 重さ・刃の入り方・音を聴く
職人は、道具が木や土や石に触れ
**「音」「手への響き」「抵抗の強さ」**で状況を判断します。
✔ たとえば剪定では
- 枝に刃が入る“スッ”という音
- 刃先のかすかな振動
- 切り口の手応え
これらを指先で感じ、
「今、この枝はどこまで切れば良いか」を判断します。
✔ 石組では
- 石槌で叩いた時の音の違い
- 石が安定した時の“沈む感覚”
- 少し動いた時の重心のずれ
耳と手の両方で、石の“声”を聞きながら据えていきます。
道具はただの金属ではなく、
**素材と職人をつなぐ“感覚の延長”**と言えます。
🌲 長年の経験でしか身につかない“勘どころ”
剪定、植栽、石組、土づくり……
どんな作業にも「勘どころ」があります。
これは教科書にもマニュアルにも載っていない、
**職人だけが持つ“自然を読む力”**です。
🌱 「庭は育つ」という考え方と、道具との付き合い
造園の世界では、庭は“完成した時が最高”ではありません。
むしろそこから育っていく存在です。
- 剪定で枝の未来をつくる
- 根が張る方向を読みながら植える
- 石が馴染むまでの時間を含めて設計する
職人は、5年後・10年後の姿を想像しながら 手を入れます。
そして道具はその未来づくりを支える存在。
使えば使うほど手に馴染みます。
道具を丁寧に手入れするのは、
“未来の景観を整えるための準備”でもあるのです。
🛠 造園現場に流れる「手しごとの精神」
どれほど機械や新素材が進化しても、
庭づくりの核心にあるのは 手で触れること、人が感じること。
- 木のしなり
- 石の重み
- 土の湿り気
- 風の抜け方
- 光の射し方
これらすべてを、職人は身体で受け取りながら仕事を進めます。
たとえ小さな植栽ひとつでも、
「どうすればこの庭が気持ちよくなるか」を考え抜く。
そこに、造園という仕事の奥深さがあります。
💬 庭づくりをもっと身近に
庭づくりは、プロの仕事というイメージが強いかもしれませんが、
本当はもっと身近で、暮らしを豊かにしてくれる存在です。
- 季節の変化を楽しむ
- 木の成長を見守る
- 落ち葉を掃きながら気持ちを整える
- 花が咲く喜びを感じる
それだけで、庭は“生活の一部”になります。
もし庭に興味が湧いたら、
小さな植物ひとつから始めてみてください。
それはきっと、自然とつながる最初の一歩になるはずです。

