🌿 第2回:剪定の技と道具 ― 樹形を整える“見えない作業”
— 三神庭芸「職人の道具と手しごと」シリーズ —
剪定とは、ただ枝を切る作業ではありません。
樹木のクセ、光の入り方、風の通り道、翌年の芽の吹き——
これらを読み取りながら、**「木が本来持つ美しさを引き出す作業」**です。
今回は、剪定に欠かせない道具と技術、
そして愛媛・松山で特に多い庭木の剪定ポイントをご紹介します。
✂️ 木ばさみ ― 細枝を丁寧に整える基本道具
木ばさみは、最も使用頻度が高い“主役”の道具。
✔ 特徴
- 細い枝を正確に切り、切り口を綺麗に仕上げる
- 樹木の負担を最小限に抑える
- 片手で素早く扱える
✔ 活躍する場面
・細い葉の木の剪定
・細枝を抜いて風通しを良くする
など、多くの樹木で出番があります。
🌳 高枝切りばさみ ― 手が届かない場所を安全に美しく
高い場所の枝を切るための道具ですが、
ただ“高さを稼ぐ”だけではありません。
✔ 特徴
- 地面から剪定できるため安全
- 樹形を崩さず、自然なラインを守れる
- 太すぎない枝に最適
✔ 松山の庭での使い所
・高い位置の徒長枝
・混み枝を整える
・天端ラインを揃える
職人は、地面から木の全体像を見ながら切るため、
仕上がりが自然に美しくなります。
🔪 剪定ノコギリ ― 太枝を“傷めないように”切る技
ノコギリは力で押し切る道具ではなく、
刃の重みとリズムを使って引く時に切るのがポイント。
✔ 特徴
- 太い枝を安全に切れる
- 切り口を滑らかにし、木の治癒力を助ける
- 剪定ばさみでは切れない部分で必須
✔ 使い所
- 古枝の除去
- 枯れ枝の除去
- 枝の更新剪定(太枝の入れ替え)
樹木は切られた部分から菌が入りやすいので、
“切り口の美しさ”は職人が最も気を遣うポイントです。
🌿 樹木のクセを読む
剪定には、マニュアルでは説明しきれない「読み解く力」が必要です。
職人は、木を見た瞬間に
- 芽の向き
- 枝の付き方
- 年数ごとの成長のクセ
- 日当たり
- 風の通り道
これらを瞬時に判断し、
**「この木が一番気持ちよく育つ未来」**を思い描いて切っていきます。
切りすぎれば弱る、
切らなければ樹木に影響が出る
その絶妙なバランスこそ、剪定の奥深さです。
🌱 おわりに
剪定は、道具さえあれば誰でもできるように見えますが、
道具を正しく選び、丁寧に扱い、
木のクセを読みながら未来を見据えて切っていく——
それが造園職人の剪定です。
次回は、
第3回:「石を動かす道具 ― 石組・飛び石の世界」
をお届けします。どうぞご期待ください。

