🌿 第5回:土と水を操る道具 ― 地形づくり・植栽・石積み
— 三神庭芸「職人の道具と手しごと」シリーズ —
庭づくりの中で、もっとも“見えにくいけれど大切”なのが
土と水のコントロールです。
美しい植栽も、立派な石積みも、
その下にある土と排水が正しくつくられてこそ長持ちします。
今回は、造園と土木の境界にあるこの重要な作業を支える道具と技術をご紹介します。
🛠 土と地形を扱う道具 ― 庭づくりの基礎をつくる
⛏ ツルハシ
固い地盤を砕き、植栽や石積みの“下地づくり”に欠かせない道具。
🥄 スコップ(丸スコ・角スコ)
- 丸スコ:掘る・すくう・植栽穴に最適
- 角スコ:整地・レベル調整・排水溝の形成に最適
庭の形を大きく変える作業は、このスコップの動きで決まります。
🍂 レーキ
土を均す、砂利を整える、植栽帯の仕上げを整える道具。
表面の凹凸を滑らかにすることで、水の流れも安定します。
📏 水糸(みずいと)・レベル(水平器)
- 高低差を正確に測る
- 勾配(排水の角度)をつくる
- 延段・アプローチ等の通り出し
庭の仕上がりの美しさは、この**“見えない水平・勾配”**の正確さで決まります。
💧 排水の良い庭づくり ― 長持ちする庭の基本中の基本
排水設計は庭づくりで最も重要な工程のひとつ。
✔ 基本ポイント
- 庭全体を1〜2%の勾配で排水方向へ
- 花壇や植栽帯は盛り土で通気性を確保
- 雨水が建物側に流れないよう逆勾配を避ける
- 砂利や砕石を地中に敷き、水の抜け道をつくる
水が溜まる庭は、
・根腐れ
・苔の異常繁殖
・害虫の発生
など、多くのトラブルの原因になります。
🌱 植栽穴の掘り方・土づくり ― 木が育つ環境を整える技術
植栽は、ただ穴を掘って植えるだけではありません。
✔ 植栽穴の基本
- 深さと広さは根鉢の2〜3倍
- 土を崩し、空気を含ませて柔らかくする
- 腐葉土・完熟堆肥・軽石等を混ぜて排水改善
- 根が伸びやすい“ゆとり”をつくる
樹形の向き、風の流れ、日当たりの角度を読み、
“その木が心地よく育つ姿”をイメージすることが大切です。
松山市の住宅地では粘土質土壌も多いため、
土壌改良を行うだけで樹木の生育が格段に良くなります。
🌧 雨庭(レインガーデン)
近年注目されているのが、
雨を活かした庭づくり 雨庭(レインガーデン)。
雨水を一時的に受け止め、植物や土が自然に浄化する
エコロジーな庭づくりの手法です。
雨量の多い地域では、雨庭は排水不良の解消にも役立つため、とても相性が良い設計です。
🌱 おわりに
庭は目に見える部分だけでなく、
その基盤となる“土”と“水”が整っていてこそ美しく育ちます。
今回紹介した道具たちは、
景観の裏側で静かに仕事を支える、まさに庭づくりの影の主役。
次回は、シリーズ最後の
第6回:「職人の“手”が生み出す景観 ― 道具を超える技術とは」
をお届けします。どうぞお楽しみに。

